作法と荘厳

僧侶が法要や儀式などに用いる衣体、その着け方


法要や儀式に用いる法具や経本・声明本・御文章などの持ち方、扱い方

 

法要や儀式を行うに際して、行事の開催や開始を知らせたり、僧侶の出仕を促したり、または法要・儀式中に用いるもの

 

寺院の本堂や家庭の仏壇などの荘厳、および清掃をするときの心得

執 持 法

法要や儀式に用いる法具や経本・声明本・御文章などの持ち方、扱い方を「執持法」という。法具の名称や執持法は、次の通りである。

1 念珠(ねんじゅ)・中啓(ちゅうけい)・夏扇(なつおうぎ)

念珠は、双輪念珠と単輪念珠の二種がある。色衣・黒衣などを着用したときは双輪念珠を用い、それ以外のときは単輪念珠を用いる。法要や儀式に出仕する場合は白黒珠・白切房の双輪念珠を用い(撚房は用いない)、布教などの場合は紐房の双輪念珠を用いてもよい。持ち方は、いずれの場合も左手の親指と他の四指の間にかけ、親珠を下にして持ち、房は自然に垂らす。

中啓は、衣と袈裟を着用したとき双輪念珠とともに用いる。また、法要以外の儀式で衣と輪袈裟を着用した場合は、中啓の代わりに夏扇を用いることもある(雪洞は用いない)。

持ち方は、いずれも起立または歩行の場合は右手で要部を持ち、表を外側に向け開いた方を前方にして、先端を少し下げ、かるく腰にあてがう。正座の場合は、表を上に要部を右に向けて、ひざの前に横一文字に置く。また、腰かけた場合は右手に保持したまま、両手をひざの上に置く。

起立または腰かけた姿勢で合掌したり、または華籠などを保持するために両手を用いる場合は、表を前にして白衣のえり元にさす。

〔注〕

①念珠は、畳や床の上など歩行する場所にじかに置かない。必ず適当な敷物の上に置くか、器のなかに入れる。あるいは中啓・夏扇などを開いて、その上に置く。

②中啓や夏扇を開いて、あおがない。

③念珠や中啓・夏扇を持ったまま、手洗いなどの場所に行かない。

2 華 籠(けろう)

華籠は、法要や儀式において、散華を行うための華葩(花びらをかたどった紙片)や声明本などを入れるのに用いる。

保持の仕方は、籠の手前のひもを両手の四指でかるくにぎり、つり金具のあたりを親指で押さえるようにして、胸の前で水平に保持する。ひもの色が赤・白・青(緑)など三色の場合は、一般法要や各種慶讃法要のときは赤いひもを前方にし、追悼法要および葬儀のときは白いひもを前方にして、他の二筋を手前にする。

○華籠を保持して着座する場合は、次の順序で行う。

1右手でえり元の中啓を抜きとり、要部で華籠のひもを左前外側からたぐり集め、右手で中啓と華籠のひもを持つ。

2両手で華籠を保持して座前に蹲踞し、両ひざを回畳につけ、片ひざを軸に半回転して着座する。

3華籠を両手で右ひざ横に置いてから、中啓をひざの前に、要部を右に向け横一文字に置く。

○華籠を保持して座前に起立する場合は、次の順序で行う。

1右手で華籠をとって左手に持ちかえ、右手で中啓をとる。

2中啓の要部で華籠のひもを左前外側からたぐり集め、右手で中啓と華籠のひもを持つ。

3両手で華籠を保持して座上に蹲踞し、その姿勢のまま左足から前に進み、座前の板敷きに出て蹲踞する。

4たぐり集めたひもをはなし、中啓の要部でひものもつれを直す。

5中啓をえり元にさしてから、両手で華籠を保持し起立する。

〔注〕

①礼盤上の導師に華籠を賦す(持って出る)場合は脇卓に置く。賦すときおよび撤す(持って帰る)ときは、ひもを右手でたぐり集め、両手で華籠の裏にまとめてから、華籠を目の高さに奉持して進退する。

②華籠は回畳では畳の上に置き(なるべく畳の縁にかからないようにし、ひもは散らばらぬよう華籠の下にまとめる)、座前の板敷きには置かない。また、礼盤では脇卓に置く。

③起居礼などのために声明本を置くときは、華籠のなかに置く。

3 柄 香 炉(えごうろ)

柄香炉は、香炉に柄をつけて保持しやすくしたもので、平常時は礼盤に舗設される。法要時には導師のほか、結衆や「頭」などが用いることもある。

保持の仕方は、右手で上から柄の端の曲がっている部分を持ち、左手は下から柄の中央部より少し香炉寄りを持つ。香炉の部分を少し前方に出して、胸の高さに水平に保持する。

〔注〕

①柄香炉を保持して着座または起座する場合は、中啓をえり元にさしてから、柄香炉を両手で胸の高さに保持したまま行う。

②柄香炉を保持して声明を唱える場合、調声または独吟のときは保持し、同音になれば置く。
ただし、起立している場合は、同音になっても保持したままでよい。

③柄香炉を置くときは、経卓や向卓または焼香卓があれば、その上の右側に香炉の部分を前方にしてたてに置く。卓がなければ中啓を半開きにして、香炉の部分をその上に置く。
柄香炉とともに華籠も依用している場合は、香炉の部分を華籠のなかに入れて置く。
(声明本の上に置かない)

○華籠と柄香炉を保持して着座する場合は、次の順序で行う。

1右手でえり元の中啓を抜きとり、中啓の要部で華籠のひもを左前外側からたぐり集める。

2中啓とひもは右手で持ち、柄香炉の柄を華籠の左手前の縁にのせたまま、両手で保持して座前に蹲踞し、両ひざを回畳につけ、片ひざを軸に半回転して着座する。

3左手に柄香炉を持ったまま、両手で華籠を右ひざ横に置く。

4中啓をひざの前に置いてから、右手に柄香炉を持ちかえ、香炉の部分を華籠のなかに置く。

(声明本の上に置かない)

○華籠と柄香炉を保持して起立する場合は、次の順序で行う。

1右手で柄香炉をとって左手に持ちかえ、右手で華籠をとって柄香炉の柄部分の下に移す。

2右手で中啓をとり、要部で華籠のひもを左前外側からたぐり集めて、華籠・柄香炉・中啓を両手で保持し、座上に蹲踞する。

3そのままの姿勢で左足から座前に出て、たぐり集めたひもをはなし、中啓の要部でひものもつれを直す。中啓をえり元にさしてから、両手で華籠と柄香炉を保持して起立する。

4 如 意(にょい)

如意は、本山における宗祖降誕会の無量寿会作法の論義(論題について問答すること)で、講師が持つ法具である。柄香炉のように両手で持ち、先端を少し前に出して胸の前で保持する。

5 経本・声明本・読物

経本などの扱い方は、本を頂戴してから開き(経卓があればその上に置いて)、読誦する。

読誦し終われば、本を閉じてから頂戴する。経卓がない場合は、両手で胸の前に保持して読誦する。

経本などが巻物である場合、および御文章や御消息などは(拝読の仕方は「読物作法」を参照)、経卓の有無にかかわらず、読誦・拝読中は胸の前に保持する。

導師や調声人が独吟している間は、諸僧はひざの上に本を保持する。

〔注〕

①経本はあらかじめ経卓の上にのせて置き、声明本は懐中に所持して入堂することを通則とする。
ただし、向卓に据箱を用いる場合は、あからじめ準備し、なかに表白、声明本などを納めておく。

②声明本を懐中に所持して入堂したときは、経卓があっても開くまでは懐中に納めておき、閉じた場合はただちに懐中に納める。出し入れするときは、右わき下のところから行う。

③経卓がない場合、起居礼などのために経本などを座上に置くときは、華籠を所持していればそのなかに置き、所持していなければ中啓を開いてその上に置く。

④経本などは、畳や床の上などにじかに置かない。必ず適当な敷物や台の上に置く。

経本などを頂戴するときは、これを両手に持ち、頭を少し下げ気味にして静かに額に頂く。この場合、経本などの下端が鼻頭の少し上のところにあって、垂直よりもやや前に傾くぐらいを適度とする。

法要や儀式以外の場合でも、経本などの開閉に際しては必ず頂戴する。

御文章・御俗姓御文章・御伝鈔(本山では御伝記という)・御消息などを拝聴するときは、正しい姿勢を保ちながら頭を少し下げて拝聴する。領解文を出言するときは、御本尊に向かって正座の姿勢で合掌し、頭を少し下げて出言する。または正座の姿勢から頭を下げ、両手を畳につけて出言する。

本ページは『浄土真宗本願寺派 法式規範』をもとに、ホームページ用に抜粋し構成したものであるため、凡例・本願寺・大谷本廟・直属寺院の荘厳に関すること、並びに椅子席規範用語解説、口絵、イラストなどについては法式規範を参照ください。