作法と荘厳

僧侶が法要や儀式などに用いる衣体、その着け方


法要や儀式に用いる法具や経本・声明本・御文章などの持ち方、扱い方

 

法要や儀式を行うに際して、行事の開催や開始を知らせたり、僧侶の出仕を促したり、または法要・儀式中に用いるもの

 

寺院の本堂や家庭の仏壇などの荘厳、および清掃をするときの心得

荘 厳 法 

浄土真宗の寺院においては、「御本尊を安置する堂」を本堂といい、寺族が日常生活を営む建物を庫裡(庫裏)という。本堂には内陣・外陣、左・右余間、後堂、および周囲に勾欄を巡らせた縁がある。

また、本堂の正面階段下を向拝といい、後堂から内陣への出入口を後門という。

寺院の内陣には、宮殿のうしろ左右に脇壇があり、一般の寺院では左脇壇(向かって右)に宗祖御影(親鸞聖人の御影)を安置する厨子を置き、右脇壇(向かって左)には先師御影(先師上人の御影)または蓮如上人御影を奉懸する。

また、左右の余間には七高僧や聖徳太子の御影などを奉懸し、右余間壇上(向かって左)には御文章箱を置く。

〔注〕

御堂内の呼称は、御本尊より見て左右を説明している。

 

寺院の本堂や家庭の仏壇などの荘厳、および清掃をするときの心得は、次の通りである。

1 内陣の荘厳

本堂の内陣を荘厳する仏具は、次の通りである。

(1)宮殿(くうでん)・厨子(ずし)

寺院の内陣において、須弥壇上にあって御本尊を安置する龕(がん)を「宮殿」といい、宗祖御影(親鸞聖人の御影)を安置する扉のある龕を「厨子」という。

(2)金灯籠(かなどうろう)・輪灯(りんとう)・菊灯(きくとう)

金灯籠・輪灯は灯明具。金灯籠は金属製の装飾された灯籠で、宮殿あるいは厨子の前部左右に天井から一対を吊るす。輪灯は、御本尊や祖師前の前卓の両側に一対を吊るす。

菊灯は、台座が菊花をかたどって造ってある灯明台の一種で、輪灯の代用にもする。本山では登礼盤時や巡讃の灯明具として、さざえ(辛螺と記す)と称する菊灯を用いる。

(3)瓔珞(ようらく)・戸帳(とちょう)・華鬘(けまん)

いずれも御本尊前などを荘厳する仏具。瓔珞は、宮殿などを飾る珠玉と花形の金具を組み合わせて綴ったもの。なお、厨子を荘厳する瓔珞様のものを宝鐸という。

戸帳は、尊像の前面と左右両側を覆う三枚一組の幕布(巻き上げなくてもよいよう中央部を切り抜いた形)。戸帳の両脚部の上に長く垂らした組み紐を揚巻という。

華鬘は、戸帳の中央正面にかける荘厳具で、金華鬘(金属製)と糸華鬘(組み紐)の二種がある。本派では宮殿には金華鬘、厨子には糸華鬘を用いる。

(4)打敷(うちしき)・水引(みずひき)・翠簾(みす)

打敷は上卓や前卓、礼盤の向卓・脇卓などにかけて、尊前を飾る装飾布。水引は、法要のとき板敷きに直接置いた前卓の打敷の下にかける装飾布。翠簾は、内陣と余間や外陣との境界の長押にかけるすだれをいう。

(5)天蓋・礼盤

天蓋は天井から吊るす荘厳具で、仏天蓋・人天蓋の二種がある。

礼盤は、御本尊前の前卓あるいは常香盤の手前に置くもの。導師が着座して法要を執行する礼盤と、向卓(立経台)、脇卓(柄香炉・塗香器)、磬台(磬・磬枚)の諸具からなる。

2 仏前の荘厳

仏前の上卓や前卓に荘厳するものとして香・華・灯があり、次のように組み合わせて用いる。

(1)四具足(しぐそく)

華瓶(けびょう)一対・蠟燭立・火舎(かしゃ)

御本尊前の上卓に荘厳する仏具。

(2)五具足(ごぐそく)

花瓶(かひん)一対・蠟燭立一対・香炉(金香炉―香炉台、土香炉)

前卓に荘厳する仏具。主に報恩講法要・慶讃法要や葬儀などの儀式に用いる。

(3)三具足(みつぐそく)

花瓶・蠟燭立・香炉(金香炉―香炉台、土香炉)

前卓に荘厳する仏具。 平常時の仏具の置き方は、右の図の通りである。

〔注〕

①火舎や香炉・蠟燭立などは、三本の脚の一つが前面を向くように置く。

②法要時の荘厳で焼香がある場合は、香炉台の上には土香炉を置き、その手前に金香炉を置く。ただし、場所の都合によっては、金香炉だけにしてもよい(香炉台は用いない)。

③五具足の蠟燭立は、花瓶の前に置いてもさしつかえない。

3 仏壇の荘厳

仏壇の荘厳は、次の通りである。

○中 央

御本尊〔尊像または六字尊号(名号)〕を奉懸する。

壇上の上卓には四具足、前卓には三具足(または五具足)を置く。

御本尊前の上卓の左右に金灯籠一対を、仏壇内の前部左右に輪灯一対を吊る。

また、宮殿の屋根の隅木に瓔珞を一対または二対吊る。

○左 脇(向かって右)

十字尊号または親鸞聖人の御影を奉懸する。供飯台または香卓(前卓)を置く。

○右 脇(向かって左)

九字尊号または蓮如上人の御影を奉懸する。供飯台または香卓(前卓)を置く。

〔注〕

①仏壇は大小さまざまであるが、御本尊前に前卓だけがある場合は、御本尊のすぐ前(須弥壇上)に供飯台を置いて、前卓には三具足(または五具足)を置く(香炉は一つでもよい)。

②御脇掛として奉懸する尊号(名号)や御影は、左側(向かって右)に十字尊号の場合は右側(向かって左)に九字尊号を懸ける。また、左側に親鸞聖人の御影の場合は、右側に蓮如上人の御影を懸ける。

③経本や勤行聖典、正信偈・三帖和讃などは、経卓(和讃卓)の上に置く。

④御文章は御文章箱に納め、仏壇内の右下(向かって左下・経卓の左)または仏壇脇に置く。
拝読するときは、両手で御文章箱を目の高さに奉持したまま横向きに座り、御文章箱を座前に置く。御文章箱の蓋を御本尊より遠い側に開け、畳の縁にかからぬように置く。両手で御文章を頂戴してから、胸の前に保持して拝読する。

⑤鈴(小型の鏧)または小鏧・沙羅は、平素は仏壇内の経卓の右側に置き、桴(りん棒)はそのなかに入れておく。

⑥仏壇のなかには位牌や写真、他宗のお札・お守りなどを置かない。

⑦故人の法名(戒名とはいわない)や俗名・命日などは過去帳に記入する。過去帳は仏壇内の適当な所に置くか、引き出しなどに納めておく。

4 点 火(てんか)

点火は、輪灯・菊灯・金灯籠に灯明を点じて、尊前を荘厳することをいう。

また、内陣および余間全体に点火することを「総灯明」という。法要の場合は総灯明にするのが原則であるが、法要や儀式の種別または趣旨により、余間および脇壇については適宜に変更してもさしつかえない。

点火をするときは、後堂の給仕台において、まず紙燭(紙捻りを二本より合わせ、蠟をとかした液に浸して乾かしたもの)に火を点じ、内陣の御本尊前より両脇壇・両余間へと順次に点火する。灯明を消すときは、芯切箸で灯芯の火屑を火壺にはさみ落として消す(口で吹き消したり、扇などであおいだりして消さない)。

5 点 燭(てんしょく)

点燭は、蠟燭に火を点じて尊前を荘厳することをいう。法要の場合は、内陣および余間全体に点燭するのが原則であるが、御祥月法要のように御本尊前と御祥月上人の御影前に点燭するなど、法要の種別または趣旨により時宜に応じて定める。なお、前卓がある場合は上卓には点燭しない。

また、常香盤を設置した場合は上卓に点燭する。点燭しない蠟燭立には、木蠟(朱塗りの木製蠟燭)を立てておくのが通例である。

蠟燭には次の四種があり、法要の種別によって使い分ける。

(1)白 蠟(はくろう)

一般の法要に用いる。

(2)朱 蠟(しゅろう)

報恩講法要や慶讃法要・年忌法要(ただし七回忌以後)・永代経開闢法要などに用いる。

(3)金 蠟(きんろう)

慶讃法要・仏前結婚式などに用いる。

(4)銀 蠟(ぎんろう)

葬儀・追悼法要・年忌法要(ただし三回忌まで)に用いる。

金蠟・銀蠟は白蠟の上に金箔・銀箔を押したもので、それぞれ朱蠟・白蠟を代用してもよい。

また、蠟燭の形には碇形と棒形の二種があるが、主として碇形を用いる。

点燭をするときは、後堂の給仕台で紙燭によって蠟燭に火を点じ、尊前に奉持して蠟燭立の木蠟と立てかえる。

蠟燭を消すときは、火が着いたまま後堂に奉持し、給仕台において芯切箸または芯切鋏ではさみ消したあと(口で吹き消したり、扇などであおいだりして消さない)、木蠟に立てかえる。

〔注〕

①晨朝勤行や日没勤行には点燭を行わないのが通例であるが、晨朝勤行が日中法要を兼ねる場合や、焼香が行われる場合は、その尊前には点燭する。

②法要中に接燭(点燭したものを立てかえること)したり、芯を切る必要がある場合は、導師の独吟中を避けて行う。

6 供 華(くげ)

供華は、尊前に花などを供えて荘厳することをいう。

上卓(須弥壇上の卓)の華瓶には樒を立てる。樒がない場合は、その他の青木を立てる(色花は用いない)。また、前卓の花瓶には立花式の立て方をするが、平常時には松(捌真)・檜などの青木を真にして、四季に応じ色花をさしまぜて「つかみ挿し」とする。

立て方には、雑花式と松一式の二種がある。葬儀または三回忌までの各種法要および追悼法要などの場合は、できるだけ赤色を除いた雑花式とする。元旦会・宗祖降誕会・慶讃法要・結婚式などに際しては、松一式を用いることがある。

また、立花の真には次の四種がある。通常は捌真(さばきしん)とし、重要な法要には巻真(まきじん)や笠真(かさじん)とするのが通例であるが、松一式の場合は笠真とする。

(1)捌 真   

松の葉をそのまま捌いて真にしたもの

(2)巻 真   

松の葉を針金や糸などで束ねて真に巻き付けたもの

(3)笠 真   

松の葉を組み合わせたものを、笠形に造作した太枝にとり付けて真としたもの

(4)梅 真   

梅の枝を真にしたもの。本山の御正忌報恩講法要で御影堂の供華に用いる。

〔注〕

①供華は、枯れないうちに新しい花と差しかえ、つねに水の入れかえを怠らない。

②供華にはとげや毒のある花、造花などは用いない。

7 供 香(ぐこう)

供香は、尊前に燃香(ねんこう)または焼香(しょうこう)することをいう。

燃香は、勤行の有無にかかわらず、常香盤または土香炉に抹香で供香することをいう。

焼香は、法要や儀式にあたり、尊前などにおいて金香炉に沈香・五種香などを供香することをいう。

法要の場合には、点火・点燭のあと御本尊前より両脇壇・両余間へ、順次に各尊前に燃香する。内陣や余間などの前卓で焼香をする場合は、あらかじめ金香炉を香炉台よりおろし、土香炉と置きかえて手前に置く(これを転置という)。金香炉の蓋を左側に、香盒を右側に置いて、入子(いれこ:金香炉のなかに火を入れる器)に火を入れておく。この場合も土香炉には燃香しておく。

〔注〕

①抹香は線香で代用してもよい。線香は立てずに適当な長さに折り、必ず横にして供える。

②焼香をする場合は金香炉を用いる。ただし、外陣では土香炉を用いてもよい。

③燃香が行われている香炉には焼香しない。

④焼香しない場合は、金香炉の蓋をして土香炉と置きかえる。また、香盒は撤去する。

8 供 飯(ぐはん)

供飯は、尊前に仏飯を供えることで「上供」ともいう。

仏飯は、なるべく仏飯所またはそれに準ずる所で別に炊き、仏飯器に盛って御本尊前から両脇壇・両余間へと、順次に上供する。また、仏飯を尊前から撤することを「下供」という。

各尊前には、次のように上供(または下供)する。

(1) 御本尊前の上卓には一対を上供する。ただし、供飯台は用いない。

(2) 祖師前は、厨子の前に供飯台を置いて上供する。祖師前の前卓に打敷をかける場合は、供飯台にも打敷をかける。

(3) その他の尊前には、前卓の場合は香炉台の上、香炉の背後に上供する。香卓の場合は、土香炉の背後に上供する。いずれの場合も供飯台は用いない。

〔注〕 

①平常時の供飯は、晨朝勤行前に上供して、正午までに下供するのが通例である。

②上供または下供するときは一揖して行う。

③仏壇で卓上に仏飯を上供する場所がない場合は、その卓の後方に供飯台を設けて上供する。

9 供 物(くもつ)

供物は、尊前に供える餅・菓子・果物などをいう。

供物には種々のものがあるが、本山では主として次の物を供える。

鏡餅(橙、譲葉を添える)、小餅(華束ともいう)、落雁、羊羹、紅梅糖(餅米で作ったもの)、山吹(山吹色の団子)、銀杏、紅餅、饅頭、洲浜(大豆を炒った粉で作ったもの)、巻煎餅、昆布、湯葉、蜜柑、栗、柿など供物を盛るものに、次のような種類がある。

(1)供 笥(くげ)

四角・六角・八角形のものがあり、一般の法要には、主として金濃または極彩色(蓮華唐草紋様)を施した六角または八角形のものを用いる。葬儀や追悼法要には、銀濃または白木地の四角形のものを用いる。

供笥の周囲には方立を立てる。方立には金地赤縁・赤地白縁・銀地白縁などの種類があり、一般の法要には金地または赤地を、葬儀や追悼法要には銀地の方立を用いる。

(2)鏡台(かがみだい)

鏡餅(橙、譲葉を添える)をのせるもので、四角形で脚のない白木地の台。

(3)雲脚台(うんきゃくだい)

雲形の脚を付けた四角または丸形の白木地の台で、主として聖忌法要・慶讃法要・結婚式などに用いる。

供物の盛り方はその種類によって異なるが、小餅については次のような種類がある。

(1)須弥盛(しゅみもり)  須弥形に盛るもの

(2)杉 盛(すぎもり)   杉形に盛るもの

(3)串 盛(くしもり)   串に刺して盛るもの  

(4)段 盛(だんもり)   小餠と板を交互に重ねて盛るもの

(5)直 盛(じきもり)   芯を用いずじかに盛るもの

〔注〕 

①供物の色彩は、慶讃法要・結婚式などの場合は紅や黄色などを用い、葬儀や追悼法要などの場合は紅色などの色彩を避ける。

②供物の具数に関しては、「法要と儀式」において一例を示しているが、供物が一具(一対のこと)のみの場合は餅の類を用い、二具以上の場合は菓子・果物などを順次に用いる。

③供物を供える尊前の卓には打敷をかける。

④須弥壇上に供物を供える場合は、供物台を設けてその上に供える。

⑤卓などに供物を供える場合は、じかに供えず供物用の台を用いる。

10 清 掃

本山では毎日、晨朝勤行前および日没勤行が終わってから清掃を行う。ただし、12月20日は「御煤払」の日として晨朝勤行後に両堂の荘厳を撤去して行う。また、本山では毎月一回、御本尊と祖像の「御身」(御身拭)を行い、1月8日は「大御身」の日として特に丁寧な御身拭が行われる。

一般の寺院でも、上記の例に準じて適宜に清掃を行う。

清掃するときは、須弥壇や脇壇など壇の上から先に行う。また、清掃用具は御本尊や御影などに用いるものと、須弥壇や脇壇、上卓・前卓・香卓などに用いるもの、および内陣の板敷きや余間・外陣の畳などに用いるものとを区別する。

11 奉仕の心得

内陣や余間に奉仕するときは、衣または布袍、輪袈裟を着けて行う。戸帳・打敷・水引をかけ、供物・供華などの内陣の荘厳をしたり、清掃などを行う場合は、なるべく巻障子を閉めるか、または翠簾をおろして行う。巻障子を開けたまま行う場合は、御本尊前を横切らないように心がけ、各尊前を通るときは一揖する。

本ページは『浄土真宗本願寺派 法式規範』をもとに、ホームページ用に抜粋し構成したものであるため、凡例・本願寺・大谷本廟・直属寺院の荘厳に関すること、並びに椅子席規範用語解説、口絵、イラストなどについては法式規範を参照ください。