作法と荘厳

僧侶が法要や儀式などに用いる衣体、その着け方


法要や儀式に用いる法具や経本・声明本・御文章などの持ち方、扱い方

 

法要や儀式を行うに際して、行事の開催や開始を知らせたり、僧侶の出仕を促したり、または法要・儀式中に用いるもの

 

寺院の本堂や家庭の仏壇などの荘厳、および清掃をするときの心得

打 物 法

法要や儀式を行うに際して、行事の開催や開始を知らせたり、僧侶の出仕を促したり、または法要・儀式中に用いるものとして打物がある。

1 梵鐘(ぼんしょう)・喚鐘(かんしょう)

梵鐘は「集会鐘(しゅうえしょう)」ともいい、法要や儀式を開始するに先立って、大衆が参集する合図として三十分または一時間前に撞く。打数は十打とし、各間隔をゆっくりあけ、余韻がかすかになってから次を撞き、最後の二打は少し間隔を早めて撞く。梵鐘は、法要や儀式以外(朝夕の時報など)に撞く場合もある。

喚鐘は「行事鐘(ぎょうじしょう)」ともいい、法要や儀式の開始を知らせる合図として打つ。

打ち方は、適当な間隔で七打してから、打ち上げて打ち下し、次に五打してから再び打ち上げて打ち下し、最後に三打する(三打のうち第二打は小さく打つ)。

2 大太鼓(おおだいこ)・木版(もくはん)・雲版(うんぱん)

大太鼓は、主として梵鐘(集会鐘)を打つ前に、法要や儀式の開催を知らせる合図として打つ。

打ち方は、(最初に太鼓の縁をかるく打ってから)。一打してから、打ち上げ打ち下ろし、再び打ち 上げ打ち下ろして、最後に二打する。

梵鐘がない場合は代用として用いてもよく、その場合は梵鐘と同じように打つ。

木版は、厚さが10㌢程度の長方形の板でできた打物で、両端をひもで吊るし撞木(丁字形の木づち)で打つ。主として出勤者や参列者に対して服装の準備や、出仕を促す合図などに用いる。

打ち方は、一打してから、打ち下ろして、一打する

雲版は、青銅などで雲形に鋳造した扁平な打物で、両端をひもで吊るし撞木(丁字形の木づち)で 打つ。主として行事の開始や、出勤者の出仕を促す合図に用いる。

打ち方は、単に二打する。喚鐘の代用として用いてもよく、その場合は喚鐘と同じように打つ。

3 磬(けい) ・鏧(きん)・沙羅(さわり)

法要や儀式中に用いられる打物に、磬・鏧・沙羅がある。

磬は、金属製の薄い板状の打物で、礼盤右の磬台に吊るし、導師が登礼盤をしたときに用いる。

打つときは磬枚(けいばい:打棒)の端を持ち、これを垂直に保ちながら打つ。

打つ個所は、声明作法の最初と中間および最後に打つ。原則として最初は二音し、中間では一音(または二音)、最後は二音打つ。打ち方は、最初の磬は右手で磬枚をとり一音打ってから、いったん向卓に磬枚を置く。次に右手で柄香炉をとり、左手に持ちかえたあと、再び右手で磬枚をとって二音目を打つ。中間または最後の磬は、柄香炉を保持している場合は左手に保持したまま打ち、向卓に置いている場合は置いたまま打つ。

鏧は、やや深いお椀型の金属製の打物で、鏧布団または鏧布団の下に鏧台を用いることもある。

大鏧・小鏧・引鏧の三種があり、すべて桴(打棒)で外側を打つ(小鏧は内側を打ってもよい)。

打つ個所は、読経の最初と中間および最後に打つ。最初は二声(単に○○と二声する)し、中間(経段または短念仏の終わりなど)では一声、経段中の各節および回向の終わりでは鏧(強弱強)と三声する。

また、その他に緩急・作相の打ち方があり、次のように打つ。

沙羅は、鏧よりやや肉厚が薄いお椀形の金属製の打物で、沙羅台または鏧布団の上に置いて用いる。打ち方は扁平な桴で内側を打ち、その他は鏧と同じ要領で用いる。ただし、緩急・作相の打ち方はしない。

4 鐃(にょう)・鈸(はち)

鐃は、銅製で立ち上がりの縁のついた浅い鍋型の打物。持ち方は左手に吊りひもを持ち、凸部を前にし、右手の桴(打棒)をその前に添えて所持する。

打ち方は、次頁に示すように鈸の合間に打つ。打つときは左手でひもを持ち、鐃の凸部を右に向けて胸の前に保持し、右手で桴を持って打つ。鐃を畳の上に置くときは、右ひざの横に凸部を上にして置き、桴は柄を手前にして鐃の右側にたてに置く。

鈸は、同じく銅製で中央の凹みにひもがついた皿型の二枚一組の打物。両手に一枚ずつ持ち、胸の前に保持して打ち合わせる。鈸を畳の上に置くときは、右ひざの横に凸部を上にして二枚重ねて、ひもは凸部の周囲をめぐらすように巻いて置く。

鈸の打ち方には、「上」と「邪」の二種がある。「上」は、鈸の前方を合わせたまま手前の端を強く打ち合わせ、さらに前端を合わせて余韻を残すように打つ。「邪々」は、前端を合わさず手前の方で軽く二度打ち合わせ、余韻を残さないように打つ。

この鐃・鈸は、主として大師影供作法にある「五眼讃」が終わったときなどに用いる。打ち方には、真鈸と略鈸①②の三種がある。

(1)真鈸の打ち方 (○印は鐃を示す)

上上 ○ 上邪々上 ○ 上邪々上 ○ 上上上 ○ 上上上 ○ 上邪々上 ○

上邪々上 ○ 上上 ○ 上上 ○ 上邪々上 ○ 上邪々上 ○ 上 ○○ 

(2)略鈸の打ち方

①上上上上 ○○

②上上 ○ 上邪々上 ○ 上邪々上 ○ 上 ○○

5 節柝(せったく)・経太鼓(きょうだいこ)

節柝は、拍子木のような二本一組の唐木(紫檀や黒檀など)製の打物で、数人以上が一緒に経典を読誦するとき、読経の速度を調整するために用いる。打ち方は、巾が広い面を内側にして、両手で各一本ずつ根元の部分をかるく持ち、交差させず平行にして先端を打ち合わせる。

打つ個所は、経題の初字には打たず、経文の同音から各句の初字の発音と同時に一打する。

仏説阿弥陀経

○    ○       ○      ○     ○

如是我聞。一時仏在舎衛国。祇樹給孤独園。与大比丘衆。千二百五十人倶。……

経太鼓は、中空の木製の円胴に皮を張った台付きの打物(太鼓の一種)で、数人以上で経典を読誦するときに用いることがある。打つ個所は、経典の文字の上で正確には定まっていないが、経典の各節ごとに最初は間隔を十分とって打ち(例えば一頁に一打または二打)、次第に打つ間隔をつめて、節の終わりは打ち下す。

○    ○    ○    ○    ○    ○   ○ 

同時倶作。聞是音者。皆自然生。念仏念法。念僧之心。舎利弗。其仏国土。 打ち下し  一打     

成就如是。 功徳荘厳。

(最後は打ち下して一打する。引きつづき鏧を強弱強と三声する)

このように各節ごとにくり返す。ただし、古来より各巻の最後の節(例えば『仏説無量寿経』上巻の五節ある五節目)には打たないことになっている。

本ページは『浄土真宗本願寺派 法式規範』をもとに、ホームページ用に抜粋し構成したものであるため、凡例・本願寺・大谷本廟・直属寺院の荘厳に関すること、並びに椅子席規範用語解説、口絵、イラストなどについては法式規範を参照ください。